| １冊目 | ２冊目 | ３冊目 | ４冊目 | ５冊目 | ６冊目 | ７冊目 | ８冊目 私の兄弟会社に勤めるシノさんは、大ベテランの「撮り鉄」である。 私より少し年上で、今も週末は日本各地へ鉄道撮影旅行に出かけられている。 昔は駅スタンプも集めておられ、スタンプ帳を見せてもらったら、 1970年代のＤＪ印がたくさん押された宝物であった。まだＳＬが残っていた時代 で、各地へその写真を撮りに行かれていたそうだ。 スタンプも写真もとても素晴らしかったので、ＤＪ印とＳＬを追って各地を旅された、 シノさんの若き日を「押し鉄列伝」の一つの物語として、紹介させていただく。

次なる被写体 電気機関車・特急電車・ブルートレイン

1975年4月、シノさんは高校２年生になった。 遥か北海道までＳＬを求めて旅してから、半年ほどが過ぎていた。 休みになると、相変わらず鉄道写真を撮りに出かけてはいたが、 すでに関東ではＳＬの時代は終わっており、シノさんの狙う被写体は、 別の車両に変わっていった。

その一つは貨物列車の電気機関車だった。ＥＦ５７の様に、ＳＬのＤ５１よりも古い電気機関車もあって、 まだ、シノさんの地元の東北本線を走っていたので、それを狙った。 青梅駅や鳩ノ巣駅、宇都宮駅などには、 古い電気機関車が保存されていたため、撮りに出かけた。 北海道に一緒に行った仲間の一人の、八百屋の息子のＭ君が、時々付き合ってくれた。 でも他の２人、Ｔ君とＧ君はＳＬ以外には興味が持てなくなったのか、次第に鉄道から離れていった。

青梅駅	鳩ノ巣駅	宇都宮駅

もう一つは、この時代の花形、特急電車である。中央本線の鳥沢駅の近くには、 撮影スポットになっている大きな鉄橋があった。そこまで行き、１８１系「あずさ」を狙ったりした。 その行き帰りに高尾駅、鳥沢駅、八王子駅のＤＪ印を押している。

高尾駅	鳥澤駅	八王子駅

そしてもう一つ、この時期シノさんが狙ったのは、上野駅や東京駅から発着していた 寝台特急、ブルートレインの姿であった。つばめ・富士・さくら・みずほなどの雄姿がたくさん残っている。

さらには、写真の技術にもこだわった。自宅に暗室を作って、自ら現像・焼き付けを行ったそうである。 撮影でも、より高い撮影技術を求められる、ポジフィルムも使うようになったそうである。

修学旅行/北東北 1975年6月

そんなシノさんの撮り鉄熱は続いていたが、高校生活でもいろいろな行事が進んでいく。 次に押されていたスタンプは、北東北の岩手、秋田、青森の物だったので、 「これはまた、撮り鉄旅でしたか？」とシノさんに聞いてみたら、 「いやいやこれは、修学旅行だよ」とのことだった。 行きは特急「ひばり」で、帰りは憧れのブルートレイン・寝台特急「はくつる」の利用だったそうだ。 特急「ひばり」の写真を撮られていたので、紹介しておこう。

東北では、バスで移動して観光。車中泊を含め４泊５日だったとのこと。 平泉の毛越寺庭園、男鹿半島の水族館と寒風山展望台、八甲田山のロープウエイ、 十和田湖や、泊まった大湯温泉のホテルのスタンプが押されていた。 ＤＪ印としては、国鉄バスの休屋駅のスタンプ２種を忘れずに押しているところが渋い。

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ワンダーフォーゲル部 1975年7月〜8日13日

次は高校２年の夏休みのスタンプで、最初は千葉の冨浦駅だが、これは家族で海水浴に行ったもの。 そのあとが、どうも尾瀬に出かけられているようなので、「これは？」と聞くと、 「ああ、ワンダーフォーゲル部の合宿だよ。沼田から尾瀬に入って山歩きさ。」とのこと。 後年シノサンは、山岳写真も撮るようになっていったが、それはこの経験がベースになったとのことである。 この時シノさんは、尾瀬の山小屋のスタンプだけではなく、駅スタンプも高崎駅、新前橋駅、沼田駅と押されていた。

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信州撮り鉄旅 1975年8月22日〜26日

山歩きもいいけれど、やっぱり鉄道写真を撮りたかったシノさんは、夏休みの終わりになって、 一人で飯田線まで出かけた。その目的もまた、渋い電気機関車の撮影だったようだ。

この時には、ＤＪ印を大いに集めている。辰野駅、伊那北駅、伊那大島駅、 駒ヶ根駅。駒ヶ根駅では他に観光案内所のスタンプを２種押している。 この２つスタンプは、つい最近まで駒ヶ根駅の観光案内所で健在だった。(2022年に番頭が押印している) 上諏訪駅のＤＪ印は、ロゴが変わった後期ＤＪ印、 需要が多かったと思われる松本駅のＤＪ印は擦り切れて残念な印影である。

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この時はその後数日、信州を旅した。鉄道だけではなく、美ヶ原の高原の風景を楽しんだりされている。 新しく高校で出来た鉄道仲間Ｋ君と、途中は別行動だったが、長野でＹＨに一緒に泊まったりされた。 ただ残念ながらＫ君はもう、故人となられているそうだ。 スタンプとしては上松駅、国鉄バス山本小屋駅、大屋駅、上田駅、 篠ノ井駅、そして長野駅で５種類を押されている。

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こうして、ＳＬ撮影は時代が変わってできなくなったものの、引き続きメインの趣味の撮り鉄を続けながら、 部活動もしたり、充実した高校生活を送っていたシノさんであった。 さて、いよいよ高校３年生になる日が近づき、そろそろ進路を考え、受験勉強もしなければならなくなってきた。 シノさんは、どんな進路へ進まれたのであろうか。次回、最終話に続く。 （→つづく）