7:00発の首里行きの、ゆいレールに乗った。

ゆいレールは、ホームで待つ時、一点注意すべきことがあるようだ。 ３両編成の場合と、２両編成の場合が混在しているため、次のゆいレールが、 どちらなのか確認して、ホームで待つ位置を決めないといけない。 今回何度か、３両編成しか止まらない位置で待ってしまい、２両編成がやってきて、 慌てて移動する羽目になった。この朝の一本目がそうだった。

久茂地川の上に作られた高架のレールの上を、昨日訪問済みの、 県庁前駅・美栄橋駅と過ぎていく。 運転士さんの制服は、沖縄の夏を快適に過ごせるように工夫した、かりゆしウエアだ。 久茂地川沿いには季節柄、沢山の鯉登りが飾られている。牧志駅へ7:06着。

7:11発のゆいレールに乗り、 7:13、安里駅着。 1997年のハネムーンでは、 この辺りの古いホテルの予約を女房が取ったので、一泊した。 しかし、そのホテルの建物も無ければ、当時の街の面影も全然ない。 再開発が進んで、高層マンションが立ち並んでいるのだ。

スタンプの図柄は、壺屋の登り窯。 沖縄の焼物は「やちむん」と呼ばれ、これまた琉球王国時代から沢山の種類のものが作られていた。 琉球の王様も産業として奨励したという。沖縄戦後、この辺り「壺屋やちむん通り」が中心となって復興した歴史がある。 ハネムーンの時、この辺りを歩き、この登り窯も見学したっけ。懐かしいな。

7:22、おもろまち駅着。丘の上に土地を開いた新しい街で、新都心」とも呼ばれている。 駅前は広く開けていて、ここまでの駅とは印象が違う。 新しい、沖縄県立博物館・美術館も、 この街にある。時間があったら寄ってみたいと思っている。

スタンプの図柄は、 組踊。 中国皇帝の使者・冊封使が、琉球王の即位儀式に来たとき、歓待の宴で踊られた。 踊奉行、玉城朝薫が創作し、1719年に初めて披露された。美しい衣装やゆったりした調子で踊る、 これぞ琉球王国の伝統舞踊である。いろいろな演目があるが「執心鐘入」もその一つ。 能の「道成寺」の話をモチーフに、琉球の話としてアレンジしたものである。

7:27発に乗り、7:30に次の、古島駅に着いた。
スタンプの図柄は、 シーサーと赤瓦屋根の家。 激しい風雨をもたらす台風に耐え、夏の暑さをうまく凌げるよう考えられた、沖縄の伝統の住居だ。

しかしこのような家の作りは、那覇のあたりではもう、ほとんど見かけなくなっている。 今の家は、頑丈なコンクリートの２階建てが多く、シーサーはいろいろな場所に乗っている。 次の7:33発の、ゆいレールに乗ると、首里の丘へと向かって、さらにどんどん登って行く。 車窓左右の山の斜面に、沢山の家がびっしり建っている。コンクリートスタイルの家ばかりだ。 沖縄では、那覇に人口が集中している。土地が足らないんだなあ、その様子が良くわかる。

7:35、市立病院前駅着。この辺りから、昔の首里の城下に入ったようだ。 スタンプの図柄は、 末吉の獅子舞。旧暦の八月の、十五夜の夜に行われている伝統行事で、 門外不出の獅子舞が披露されるという。これも琉球王国時代から250年の歴史を持つ、 伝統行事であるという。

7:39発のゆいレールに乗ると、いよいよ右手の丘の上に首里城が見えてきた。 本当は、赤い、竜宮城の様な首里城正殿の建物が、 この辺りからも見えるはずだ。が、丘の上に見えるのは、大きな工場の様な建物である。 太平洋戦争で焼失していた正殿は、1992年に美しく再建され、沖縄の人々の誇りとなっていた。 私は1993年の、母や叔父叔母と参加したツアー旅行の時、その美しい姿を初めて見た。

7:42、儀保駅着。スタンプは、有名な守礼の門と、在りし日の正殿が描かれている。 駅のステンドグラスにも、鮮やかな赤い色で建物が堂々と描かれている。 右側に描かれた「龍柱」は、正殿の前に一対立っていた石の柱である。 あの火災から一夜が明けると、黒く焼けた建物の残骸の前に、 この石の柱だけが残っていたという。

首里城正殿の再建完成は、来年2026年の秋の予定だそうだ。 が、今見に行けば、あの建物の中で進められている、復旧工事の様子を、 まじかに見ることができるらしい。それはそれで貴重な体験となろうから、 この後行ってみようと思うのだ。

スタンプは、王朝文化というタイトルで、首里城の門の一つ・瑞泉門と、 沢山の文官武官を従え、御轎（うちゅう）と呼ばれる専用の輿に乗る、 王様の行列が描かれている。毎年11月に、この行列を再現した、 「古式行列」が行われているとのことである。

この首里が、琉球王国の首都となったのは、1429年、それまで 南山・中山・北山の３つの国に分かれていた琉球を、 尚巴志王が武力統一した時であった。日本の室町時代のことである。 以来、さまざまな波乱はあれど、1879年(明治12年)、琉球処分により沖縄県となるまで、 王国は450年続いた。ここまで、ゆいレールのスタンプに描かれていたように、 その長い時間が、多くの独特の文化を熟成した。

バスの中も、道も、混雑している。
バスは慌ただしく首里城の丘へと登って行った。
（→押印登城記日本200名城・首里城につづく）