9:08、加賀温泉駅着。5月以来である。しかしその短い時間の間に、 TrainTripの新印が設置されたらしいので、まずはその取得から始めよう。

スタンプに描かれているのは、天に向かって網を投げている人物。 これで鳥を採ろうとしているのだろうか。これは、 坂網猟と言って、 鴨を取る伝統の猟なのだそうだ。鴨の群れが飛び立つ時を狙ってこの網を投げ、 見事に捕まえるのだそうだ。こんな方法で本当に捕れるのかな。 なんともユニークである。

まずはここから１駅、福井側に戻って、大聖寺駅を目指す。やってきた9:21発の福井行きは、 福井県が運営する第３セクター、ハピラインふくいの車両で、ピンク色の塗装だった。 このあたりは、ハピラインとIRいしかわの、両方の車両がやってくるのである。

4分程走って、9:25、大聖寺駅着。百万石の加賀藩の、支藩が置かれていた小さな城下町である。 先ほどの「坂網猟」は、大聖寺藩の武士の鍛錬方法として伝わったのだそうである。 小さいながらも気概のある藩だったのだろう。 しかし今は、その玄関口の駅は、無人駅になってしまった。

朝から少し曇っているが、それでも右の車窓には、遠くの山並みが見える。 近景は緑の畑や田園で、とてものどかで旅情を感じる。紅葉も進んで来たようだ。

10:09、粟津駅着。スタンプにあるように、白山の修験道から始まる古刹、那谷寺や、 加賀温泉郷の一つ、粟津温泉への玄関口である。 粟津温泉には行ったことがないので、この機会に寄ってみようと思う。 駅前から温泉街行きへのバスが、10:29発であるので、それに乗ろう。

粟津駅に戻ると、すぐに福井行きの電車がやってきた。 今度は、水色塗装の、IRいしかわ鉄道の車両である。

これで一駅戻り、動橋駅に11:13着。難読駅名として知られていて、 これで「いぶりはし」と読む。この近くを流れる動橋川は、洪水による氾濫が多い川で、 橋をかけてもすぐ土台が緩み、渡ると揺れるようになってしまったらしい。 それが地名になったという、なんとも珍しい由来だ。

まだ国鉄時代の事で、この駅も有人駅であった。 松尾芭蕉の奥の細道の句が描かれた、こんな駅スタンプがあった。 しばらくこの待合室で休憩し、暑さを凌いだのである。 懐かしいが、39年ぶりのこの駅には、駅員さんはもういない。 今回、IRいしかわ鉄道さんが無人駅にもスタンプを置いてくれたので、 再訪できたのだ。感謝しなければ。

良い感じの駅前食堂が営業していた。ここでカレーライスを食べていくことにした。 とてもオーソドックスな味で、美味しかった。

11:56発の金沢行きに乗って、押し鉄の旅を続けよう。 次の小松駅には、今日は用がないので通過し、ジグザグ作戦のために、 明峰駅も通過。双六をやっているみたいだが、3つ進んで、能美根上駅へ12:13着。 石川県の伝統産業、九谷焼が盛んな町で、スタンプに描かれている。

改札を出たところで、等身大の人物看板が出迎えてくれる。 巨人軍やメジャーリーグで活躍した、松井秀喜さんだ。 この街の出身で、文字通りこの街の看板な人物だ。

線路の下をくぐるトンネルを抜け、金沢行きの上りホームへ行ってみた。 ホーム上の狭い待合所の中を覗くと、確かに台の上にスタンプがあった。 その台は、列車の運行状況を表示している液晶パネルの制御盤のようだ。 いやあ、ここまでしてスタンプを置いてくれるとは。IRいしかわ鉄道さんの、 スタンプに対する情熱を感じる。なんでこんなに熱心なのだろう。

近くに撮り鉄スポットがあるらしく、それが絵柄であった。

そのまま待合室で待ち、12:48発の金沢行きに乗った。２駅飛ばして、美川駅に12:58着。 ちょっとした飲食ベースもある、町が運営する立派な2階建ての共同駅なのだが、 ここも無人化されてしまったか。

スタンプは「白山手取川ジオパークの景観スポット」とある。 町の北側には手取川が流れていて、遠く信仰の山、白山が見える場所である。 今日は少し曇っていて、白山は見えないのだが。

この駅は、JR時代にも駅スタンプが設置されていなかったので、初めての下車である。 ホームから一段下ったところに、小ぶりな駅舎があった。無人駅だと思っていたが、 駅員さんが設備の点検か掃除のために、たまたまいらっしゃった。 どうやら一定の時間に、巡回をしているようだ。

駅舎の中に置かれたスタンプは、親子が海水浴を楽しむ様子である。 この駅は、日本海の海に近いようで、海水浴場があるらしい。

北陸新幹線の高架が、こちらの線路に近づいてきた。3駅先の、西松任駅へ14:05着。 この近くに、北陸新幹線の車両基地があるようで、スタンプにはW7系(E7系かも？)の 車両が描かれていた。

だいぶ金沢に近づいてきたので、この辺りまで来ると電車の本数は多い。 滞在8分で、14:13発の電車があり、一駅戻って加賀笠間駅へ14:16着。

木造駅舎だが、壁がカラフルな色でタイル風に塗装されており、 モダンな印象を受ける駅だ。私はこの駅は、初下車である。 駅スタンプには、トレインパーク白山の駅とある。 新幹線の車両基地に併設された施設で、車両整備の様子などが見学できるそうだ。 またいつか時間があれば、行ってみたいものだ。

スタンプ設置直後のタイミングで、この駅は簡易委託駅化されたのである。 JR西日本としては、簡易委託化された場合は、駅スタンプは管理が出来ないので引き上げる、 という方針だったために、そのスタンプは非常に、設置期間が短かったのである。 残念なことである。その幻のスタンプの印影は、押し鉄仲間の文月さんが押されていて、 頂いていたので、ここで紹介しておこう。

その後この駅は、さらに無人駅になった。でも今回のIRいしかわ鉄道さんの設置で、 スタンプが復活したのである。喜ばしいことである。

加賀笠間駅も滞在8分で、14:22発の金沢行きに乗る。 スタンプ収集済みの松任駅を飛ばし、後で寄る予定の野々市駅も飛ばして、 金沢駅の一つ手前の、西金沢駅まで到達、14:35。

スタンプには、北陸鉄道の乗換駅であることが描かれている。 私も以前、この駅から乗り換えて、北陸鉄道の電車に乗ったことがある。 終点鶴来駅から、白山比�盗_社へ参拝に行った。 今日もちょっと、北陸鉄道の駅の方も、覗いて行こう。

14:58発の電車で一駅戻り、15:01野々市駅着。

この駅は、1983年の自転車旅の時、当時の木造駅舎の長いベンチを使って、 シュラフにくるまり、野宿させてもらった思い出の駅である。 木造駅舎はすでに無く、北陸新幹線の線路に取り込まれるような格好の駅になり、 すっかり変わってしまったが、それでもなんだか、再訪すると嬉しくなる。 土地に伝わる「じょんがら」を踊る女性を描いたスタンプが設置されていた。