敦賀を出るときはまだ暗かった空が、だんだん明るくなってきた。 右の車窓にチラリと海が見えた。若狭湾である。 小浜線の魅力は、美しい海を見ながら旅が出来る事である。 まずは今日の最初の目的駅、6:38、美浜駅に到着する。 下車はせず、設置されているTrainTrip印を、車内でスマホを操作して取得する。

描かれているのは、三方五湖レインボーラインの道だ。

この駅のTrainTrip印は、先ほど取得できたのが２代目である。 もう更新されて押せなくなった初代のスタンプがあった。 なかなか来れないでいるうちに、そうなってしまって残念だ。 印影は、押し鉄仲間のＫＡＹＺさんに頂いているから、紹介しておこう。 こちらも三方五湖の、湖と海、山が複雑に重なる風景が描かれている。

ホームから右手の奥に、海が見えている。まだ朝早いので、 乗る人も降りる人も少なく、列車は静かに駅を出発した。

押せたのは、このスタンプ。前回2008年に来た時に押したスタンプと絵柄は変わらないのだが、 印面に書かれた文言が、以前と異なっている。 以前は「ラムサールの三方五湖と梅の駅」とあったところが、 「新しい感動と笑顔がひろがるまち若狭町」と変わっているのだ。

沿線人口が減っている小浜線では、私が前回訪問した2008年の後から、駅の「簡易委託化」が進んだ。 JR西日本の駅員さんが居なくなり、地元自治体等の委託駅員さんが駅を運営する形に変化した。

ただこのスタンプを押したいために下車したので、次の列車は１時間後である。

7:44、次の東舞鶴行きに乗る。
線路はちょっと内陸に入り、車窓には広々とした田園地帯が広がる。 今日も秋晴れで良く晴れており、すがすがしい。

7:55、そんな田んぼの中にある十村駅（とむら）に停車した。 本当はこの駅にも、押して行きたいスタンプがある。 無人駅だが、町の有志が駅舎を引き取って改修し、2022年に 「ぽっぽ茶屋ほっとむら」という喫茶店をオープンさせている。 そこに、 小浜線PRプロジェクト実行委員会が、駅スタンプを設置してくれたのだ。

次の大鳥羽駅に、8:00着。ここも今回は時間の都合で下車出来ないが、 簡易委託駅であり、駅スタンプがあるそうだ。 印影を、そこかすろうさんから頂いているので紹介しておこう。

この３センチ角ほどの四角いスタンプは、 2012年ごろに小浜線で行われたラリー用スタンプで、 この先いくつかの駅に今も残っている。町の花だった、藤の花が描かれている。 良く見ると「大島羽駅」となっており「鳥」の字が「島」になっている、 エラースタンプである。間違ったまま、作り直されなかった様である。

列車は8:07、上中駅に到着した。この駅では下車して行こうと思う。 古くから、京都に向かう「鯖街道」の分岐点として、交通の要衝だった町だ。 この駅から、湖西線の近江今津駅行きの「若江線」というJRバスが出ている。 前回2008年はそのバスに乗って、鯖街道の古い宿場町「熊川宿」を見に行ったっけ。

以前からこの駅は、たくさんの駅スタンプが置かれている。 駅員さんに尋ねると、今日もいろいろ出てきた。 まずは熊川宿を描いた、以前の金沢支社印と同じ図柄のスタンプ。

そしてこの四角いスタンプは、大鳥羽駅に置かれているスタンプと同じ時に設置された、 ラリースタンプである。描かれているのは、瓜割の滝であろう。 この駅では、簡易委託化されるときに、金沢支社印以外のスタンプの撤去は拒んだそうである。 なので、ここに紹介していなかったスタンプも、いくつか残っている。 押し鉄にとっては、ありがたいことだ。

駅の待合室は、小浜線の歴史を展示する、小鉄道博物館の様になっており、 写真やホーロー駅名票が展示されていた。それらを眺めて次の列車を待った。

次の東舞鶴行きは8:19発で、割と短い間隔でやってきてくれる。 これはこの先、この沿線の中心の町、小浜へ通う人の、朝の通勤・通学の便を考えたダイヤになっているからだろう。8:28、東小浜駅着。なるほど、たくさんの乗客が乗ってきた。

さて、この東小浜駅にも駅スタンプがあるらしいのだが、残念ながら時間の都合で下車出来ない。 今回３つ目の「まだ降り立てぬ駅」になってしまった。スタンプは、鳥取の押し鉄仲間、 秋吉万葉さんに頂いているので紹介しておこう。 人魚が描かれているが「人魚浜」という海水浴場があるらしい。 いつかまた再訪して、このスタンプも押してみたい。

今日は下車せず、設置されたTrainTrip印を、列車の中から取得していく。 海の中を、たくさん鯖が泳ぐ図柄であった。 良く見ると、「刺身でもおいしい養殖鯖・よっぱらいサバ」とある。

かつて多くの鯖が取れ、京都に運んだことから鯖街道の名前が付いたほどの小浜であるが、 近年鯖の水揚げ量は激減していたのだそうだ。そこで、小浜の鯖を復活させようと、 2016年から、大規模な養殖プロジェクトがスタートしたそうだ。

小浜駅のTrainTrip印も、現在のものは２代目で、 もう押せなくなってしまった初代スタンプがあるので紹介しておこう。 私の中学からの友人、ＫＫ氏にもらった印影である。

「お水送り」は、毎年3月2日に行われる、若狭神宮寺の祭礼である。 井戸から「霊水」をくみ上げ、奈良の東大寺に送るというものである。 霊水は東大寺で3月12日に行われる「お水取り」の祭礼に使われるそうだ。 なんと、東大寺の大仏開眼の年から、1300年も続いている行事だという。 若狭と、奈良の都が、はるか昔から密接な関係であったことを物語っている。

もう一度内陸に入って、2つ目の加斗駅に停車する。
ここも今日は下車することができないが、この駅もスタンプがあるらしい。 駅前にあった理髪店で、そこかすろうさんから2000年に押された印影を頂いたので紹介しておく。 今は、その理髪店が駅舎内に入って営業されており、そこでこのスタンプが押せるらしい。 ならば私も、いつか下車して押したいものである。

加斗駅を過ぎると列車は再び浜の近くに降りて、車窓に海が広がる。

8:53、若狭本郷駅着。2008年の時は下車してゆっくり周囲を散策したが、今日は時間の都合で下車出来ない。 でも今は、その後に設置されたラリースタンプがあるそうである。そこかすろうさんに印影を頂いているので、 紹介しておこう。この駅の立派な駅舎が描かれている。大阪で行われた「花博」の時の建物を移築したものだそうだ。 いつかもう一度この駅に降りて、このスタンプを押したいものである。

その他にも、この若狭本郷のあたりは、いろいろな設備が立派なのだが、それは、原発が立地していることの見返りとして行われた、 地域振興策のおかげだ。

今日の私の小浜線の旅はまだ西へ西へと続く。
しかし「まだ降り立てぬ駅」のスタンプをいくつも紹介したせいもあり、長くなってしまった。
ここで稿を改めることにしたい。（→つづく）