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豊浜の町中の神社に，「大平正芳先生の像」というのがあった．この柔和な顔， 金比羅さんは海の神様，７８５段の石段はさすがにこたえたが，登りきって舞台に 登ると讃岐平野が一望である．讃岐富士は形のよい山だ．その向こうに瀬戸内海が 光っている．川合君は３年前ここに絵馬を奉納したので，まだあるかどうか見てきて くれといっていたが，さすがに見つからない．彼はふもとの琴平駅で野宿したそうで ある．旅の成功を祈り，宝物館を見て下る．どうも天気が怪しい．これは早く走って しまった方がよいなあと思った．今日の宿は多度津の海岸寺ＹＨだ．私は北に向かっ て走り始めた． 善通寺の駅の少し手前に，コインランドリーを見つけた．しめたと思った．どこか で洗濯をしようと思っていたのだが，結局ここまで適当な場所がなく，１週間分の 洗濯物をためてしまっていた．今日は日程にも余裕が有るのでちょうど良い．コイン ランドリーに入ると，急に雨が降り出し，すぐに外にいられない程になってしまった． 雨宿りも出来て，実にグットタイミングだ．洗濯は量が多くて大変だったが，コイン ランドリーなら楽なものである．そこで知り合った坂出のＳＥ（システムエンジニア） の人と話しながら過ごす内，やがて洗濯は終った．都合の良いことに，雨も止んだ． 気温も下がって走り易い．気持ち良く走って丸亀城まで行くことにした．東を見れば 讃岐富士に虹がかかっていた． 多度津を抜け，ＹＨまではすぐだ．夕日の瀬戸内海が美しかった．海岸寺ＹＨは やはり宿坊を利用したお寺のＹＨであった．錦鯉の泳いでいる池のある中庭を歩いて， 部屋に案内された．名古屋から来たというおじいさんと一緒に泊まることになった． 山歩きをしている元気なおじいさんには，戦争のころの話など，いろいろ聞いた． １週間，川合君の３年前の旅とほぼ同じコースで走ってきた．３年という時間に 寄って，何が変わって，何が変わらないものかを実感できた旅であった．だが，ここ からは違う旅をしようと思う．川合君は琴平から高松へ，そして小豆島に渡って， さらに船で姫路に至っているが，私はもう少し山陽地方の旅を楽しもうと思う． 多度津から福山に渡り，さらに広島，岡山の両県を走破してしまおうという計画である． ここで川合君に差を付けるつもりである．７月２３日，私は思い出深い四国と川合君 の旅に別れを告げて，瀬戸内海を渡り福山を目指すフェリーに乗った．港を離れると， 讃岐富士が見送ってくれた． （続く） |
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