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８月７日，今日は能登半島を離れる日である．禄剛崎からあと１５ｋｍほど走り， 珠洲飯田港から船に乗り，新潟県糸魚川市に渡ろうと思う．現在はこういう航路は 無くなってしまったが，この当時は新能越フェリーがこの航路を運行していた． その船が９時２０分に出るので，今日は早く出発しなければ．朝食を食べていると， 昨日の豊川の女の子が降りてきた．彼女も今日，珠洲から列車で輪行して帰るという． 彼女の列車は９時４０分発．私たちは一緒に出かけることにした． ７時，僕らの自転車は完全装備である．何人かの人が起きてきて，見送ってくれる． 昨日歌声を聞かせてくれた竹田君には眠っているところに別れを告げに行った． 昨日の夜私にまとわりつたＹＨの男の子が来て，いきなり私の水筒の水を飲み始めた． 「おい！ よせ」 「だめよ，お兄さんの分，なくなちゃう」 「ごくごく．．．ああ，あと１デシリットルしかないわい」 なんと憎たらしいガキだろう．しかし，見送ってくれているのだから許してやろうか． 私は青い帽子，彼女は赤い帽子をかぶりなおし，さあ，出発だ． |
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少し走ると，なにやら大きな山車が人に曳かれている．今日は蛸島のキリコ祭りの 日で，あの山車はキリコという，能登独特のものである．珠洲はすぐであった． まだ時間があったので，私は見付島まで行きませんかと言う．見付島は海にこつぜん と浮かぶ軍艦の様な島で，ちょっと他ではこのような変わった風景を見る事は出来ない． 彼女は，列車に乗る駅をその近くの能登鵜飼駅に変更してくれて，２人は海岸に降りて いった．本当に変わった島だ．３０ｍ程の高さのケーキの上に，クリームの代わりに緑 を乗せたような感じだ．島まで，岩で作った橋がかかっていた．海は朝の光でまぶしい． ２人はここで記念撮影をした．能登鵜飼駅に彼女を見送る．私は，旅行の前に，家で 作ってきたメッセージカードを彼女に渡す．もうあと１０枚くらいしか残っていない． 彼女と別れるのは名残惜しいが，私も珠洲飯田港に戻る時間になってしまった．いい 思い出が出来ました．ありがとう． |
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大型のフェリー，「たまひめ」はすでに港に入っていた．船はゆっくり港を離れ， 思い出深い能登半島に別れを告げた．見付島が遠くに見える．本当に素晴らしい旅で あった．多くの人と知り合った．一人旅をしていると，人と知り合うチャンスが多い ようだ．自分の求めていた旅とは，このような物だったのだろう．私はこの能登半島 でそれを捜し当てることができた．苦しい旅でもあったが，あきらめず続けて良かった と思った．旅はまだ続く．私は前方の海を見つめて考えていた．今日は糸魚川から 直江津まで走り一泊して，明日はいよいよ久野くん宅にたどり着けそうだ．今度は 新潟県，長野県の旅が待っている．まだまだ距離はある．しかし北陸，能登を走り 通した私にはこの旅を成功させる自信があった．船はいつしか糸魚川の港に着いて， 私は昼食を取りまた走った．直江津までは４０ｋｍ，海に沿っていく．北陸本線の 昔のトンネルが自転車専用道路になっていて，涼しかった．いくつもの港，水産物の 加工場，海水浴場を通り過ぎた．その日は直江津から国道１８号線を登り，新井と いう町で初めてビジネスホテルと言うものに泊まった． （続く） |
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