スコトン岬

８月１４日朝。ＹＨを出て鴛泊港に戻る。ここで礼文島への船を待つ。思いの他大きなフェリーがやってきて、さらに北への船旅が始まった。利尻岳の頂に雲が流れている、でもよい天気だ。永田さんたちはもう頂に着いたのであろうか、絶景を楽しんでいるだろうか。小１時間で、礼文島・香深の港に着く。礼文島は、結構起伏があるものの、利尻島に比べると小さな島である。日本最北端の島で、アイヌ語のレブンシリ、沖の島という言うのが地名の語源とのこと。

香深の港のすぐ西側は山になっていて、一気に標高200mぐらいまで、自転車を押して登る。眼下に香深の港、海には先ほど乗ってきたフェリーが、今度は稚内を目指して出航していくのが見える。海を挟んで利尻岳が美しい。回りは草地であり、色とりどりの花が咲いている。礼文一の眺望である。礼文は花の島とも呼ばれるぐらい、いろいろな花が咲くのだそうだ。レブンウスユキソウの様に、貴重な植物もある。登ってきた反対側も、また崖になっていて、恐ろしげな岩山がいくつも海まで突き刺さっている感じ。この下に有名な桃岩ＹＨがある。北の果てのにぎやかなＹＨとしてその名前が轟いているが、今日は私はもっと北にある、礼文船泊ＹＨに泊まるつもりだ。

　旅姿の自転車を置いて、周りを眺めているのは私だけではなかった。声をかけてみると、大阪から来た水谷さんという方だった。話を聞いてみると、ここから北へ続く礼文林道を走るか、来た道を帰るか思案中とのこと。林道は一人で走るにはちょっと不安なものだ。せっかくだから、私も一緒に林道を行くことにした。礼文林道は、礼文島の尾根の一番高いところに沿って作られている。そのため見晴らしがよい。お花畑とその下に続く海を見ながら２人で走り抜ける。もちろん未舗装なので、足元には注意をしながらであるが。

　やがて香深井川に沿って道は海岸に下りていく。海岸に出てしまえば舗装道路。やけに走り安く感じる。右手に海を眺めながらの快適なサイクリングで北を目指す。やがて久種湖という湖が左手に現れる。礼文船泊ＹＨの位置を確認して、さらに進むと、いよいよ道が果てる。スコトン岬、礼文島最北の岬である。日本最北端は宗谷岬なのであるが、こちらのスコトン岬の方が、島にあるだけになかなか行き着くのが難しい点がある。日本の果てとしては、この岬も負けないと思う。先行していた水谷さんと落ち合い、北を眺める。トド島という無人島があるが、その向こうはもうロシアまで何もない海である。

久種湖のほとりのキャンプ場でキャンプする水谷さんと別れる。よい旅を続けてください。私は礼文船泊ＹＨへ。ＹＨ前の海岸に落ちる夕日が絶品で、感動ものであった。その夕日を眺めながら、親戚の家に電話をする。毎年8月14日は、お盆ということで親戚が集まるのだが、今年の私はこんな北の果てにいる事を報告。皆が集まる場所にいられないのがちょっと寂しい気もしたが、そういう気分を味わえるのも、旅というものでしょう。

（続く)

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