|
私は就職後，もう一度日本全県走破の追求をしようと思った時に，この旅の記録も 書き始めた．実はこの書き残すと言う作業の方が，実際に自転車で走ると言う行為に 比べて根気のいるものである．半年間書きためて，やっと形になってきたが，読み返し て見ると稚拙な文章やワープロ原稿らしい変換誤字があちこちに潜んでいて，校正作業 がまた大変である．しかし，これはやって置かなければと思った．やはり何でも書き残 してこそ誰かに伝えることが出来るのである．私の仕事で作ったソフトウエアも，忙し いことを理由にちゃんとした説明を書いた仕様書を書いて置かないと，いつまで経って も他の人にその仕事を受け継いで貰うことが出来ないものである．この日本全県走破の 夢は，一人追い続けたために人に理解して貰うのが非常に難しいが，やはり誰かに伝え たいと思うのである． 旅の途中出合った人，風景，知恵，驚き．．．を残して置きたいと思う．将来，私を 理解して貰うためには，その人にこの旅について知って貰いたい．そう思って書き初め て，ずいぶん長いものになってしまった．私は１０年もの長い年月をかけて自転車の旅 をしたために，この旅行記も，半分はその当時の自分のやっていた事，考えたことを書 くためのものになってしまった．それだけに，私のこの旅行記に対する思い入れは大きい． 私の夢はまだまだ広がって行きそうであるが，しかしやはりこの旅行記は，沖縄県走 破，日本全県走破を持って完結とする事にしたい．実はこの旅行記を書こうと思い立っ た直接の動機と言うのは，親友川合賢一君の結婚が決まった事であった．これまで書い てきたように，中学時代から張り合って自転車による旅を続け，初めての長距離の紀伊 半島一周サイクリングによって私をこの世界に招待してくれた友人である．彼は２年前， 私と羽州新潟山形へ旅行した（第１２章参照）後，奥さんになる人と知り合った．いつ も川合君は私の一歩前を行くようで，９１年の６月にゴールインの予定である．私はこ の旅行記を，ひとまず川合君夫婦へのお祝いの一つとして捧げようと思う．まずは奥さ んに，そしてやがて次の世代が生まれてきたとき，川合君や私が青春時代に何を追って いたかをわかって貰うための役に立てば至上の喜びである．もちろん，この中に書いた 川合君の姿で足らないところは，自分で補って貰いたい．私自身も早く，「パパはこう いうことをしていたんだぞ．」と息子か娘に伝えられる日が来ればと思う． この旅行記を完成させるために，どうしても人に読んで貰って校正をする必要を感じ た．ありがたいことに，そんな私の作業を手伝って下さる方が現われた．東北の旅で不 思議な縁で知り合い，会津喜多方の町を一緒に歩いた岐阜の赤塚友味子さんである． （第８章参照）久しぶりにお合いする機会があったので，この話をした所，大変快く引 き受けて下さった．旅で知り合った彼女こそ，この旅行記を始めに読んで貰うにふさわ しい人だと思った．いつのまにか２００頁を越えてしまったこの旅行記の校正というの は，まったく大変な作業であると思う．短い期間の間にお忙しい中，全編を読んで細か いミスを正して下さった彼女に，この場を借りて深く感謝の意を表します． |
自転車全県走破のページへ