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銚子の駅から犬吠崎をめざして走り始めると，醤油の臭いがプンとくる．銚子は醤油 の町でもある．ちょっとした丘を越えていくと銚子電鉄のかわいい電車が足元の堀の中 を進んでいた．畑の中を下りて行くと白い燈台が見えてくる．犬吠崎だ．さすがに太平 洋，波も岩も荒々しい．今日はもう８０ｋｍ以上走っていた．結構走った．時間が少し 遅く，燈台には登り損ねたが，利根川を下りきり，ここまでこれて満足である．さて， 町に戻って宿に行こう．銚子漁港のあたりは風が強く，吹き飛ばされそうだ．大きな 漁船がたくさん停泊している．カモメが群れ飛んでいる．その向こうの大きな防波堤の 外で，今日連れ添って来た利根川がついに太平洋に注いでいる．銚子では，駅前にある ちょっとした旅館に泊まった．宿泊料金も高くないのに，海の幸をぞんぶんに食べさせ てもらい，たいへんいい思いをした．この日，いつもの様に旅の友人に絵はがきを書いた． ５月になった．１日，銚子の町を後に九十九里浜を南に下る．６０ｋｍほどで白子 ＹＨという，たいへん楽なコースであった．海を見たり，防砂林の中を走ったり，も ちろん道は平坦である． 九十九里町，片貝漁港へやってきた．１週間ほどまえ，ここで事故があった．海に出 たクルーザーが転覆，幼い子供を含む数人が行方不明になった．まだその捜索をしてい る飛行機が浜の上空を行くのを先ほど目撃した．九十九里の波は荒い．今日はそれほど 悪い天気でもないが，それでもずいぶん波が高い．その事故の日は，地元の漁師さんも 出航をひかえた様な荒れた海だったそうだ．しかし都会から来たそのクルーザーの人た ちは，せっかく来たのだからと海に出たのだそうだ．無謀だった．海の事故が増えてい る．まったく自然というものの恐さを知らないで，無謀な行為をレジャーとして楽しん でしまう傾向があるように思う． 九十九里の人たちはこの浜とうまくつきあって来た．九十九町の役場の隣には 「いわしの博物館」と言うのがあって，地引き網に代表される九十九浜のいわし漁に 関する資料が展示されている．またこの浜に延々とある防砂林にはそれを作って来た 地元の人たちと自然の長い歴史があるにちがいない．片貝漁港でさえ，砂浜ばかりで 良港のなかったこのあたりに，なんとか立派な港をと，苦労して作られた港である． そんな所へまったくそれまでこの土地と関係ない人が船をつなぎ，地元の人の意見も 聞かず海に出て，事故に合う． リゾートブームの波に乗って，これからさらにこんな事が続くのだろうか．地元の事 を見ない一方通行のリゾート開発が，この房総半島に忍び寄っている． |
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浜に出る．渚の砂が堅いので，砂浜をそのまま自転車で走ることが出来た．こんな 事は初めてだったので，とても楽しい．空はやっと晴れてきて午後の日差しが強く なってきた．海岸をどこまでも走る．サーフィンをする人，バイクで砂浜を走る人， 砂浜で何かを捜す人，勢いよく上がる凧．そのまま砂浜を１０ｋｍ程は走ったであろ う．しかし九十九里の浜はどこまでも続き，後ろを振り返れば我が自転車の作った轍 が，はるか遠くまで砂に刻まれているばかりであった．いつのまにか日焼けしていた． |
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