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秋になり，私の課では彫刻機用のＣＡＤ／ＣＡＭを作る事になって忙しくなった． 絵をイメージスキャナーでパソコンに取り込み，その形を表示し編集した後，細い工具 を付けた彫刻機で，樹脂や木の板にその形を彫り込むという物である．例によってその 形を削り出すためのＮＣデータを作るソフトである．この仕事は，私自身の担当分は 大した事は無かったので，さほど忙しく無かったが，チーム全体として仕事が完成した 時にはやはり快い達成感があった．そういう一仕事が終わって一息ついたので，また旅 をしようと思った．今度は夏の時のような目的のはっきりしないものではなく，行きた い所に行こうと思った． 「やまなみハイウエイ」を走って見ようと思う．九州，阿蘇から別府へ抜ける観光道路 で，のびやかな九州の山々を見て走る気持ちの良い道であるという．昔から行きたかった が，途中標高１３３０ｍの牧の戸峠などがあり険しく，九州全県走破を目指していた時は 敬遠せざる得なかった．今回はこれに挑戦して見ようと思う．最近長い自転車旅行をして いないので，体力に自信がない．冒険になりそうであるが，これでもし途中でリタイヤ する様なら，もう自転車の旅はままならないだろう．まだそれだけの事が出来るか自分を 試して見たかった．うまく行ったら，もう一度自転車の旅に夢を持ってみようと思っていた． ちょうど４連休があったので，一日有給休暇を加えて５日間とし，出かけることにした． 今では，寝台列車というのはぜいたく旅行のような気がする．だいたい日本の主要な 都市に行くには，飛行機か新幹線を使えば半日くらいで行ける．しかし寝台列車に乗ると， 夜の間の移動と言うことで時間的には有利だが，寝台料金と乗車時間を考えると決して安い 旅行にはならないからである．そこで今回は，そのぜいたくな寝台列車の旅も楽しもうと思 い，特急「みずほ」に乗ることにした．寝台列車に乗るのは高校の修学旅行以来だ． １０月６日朝，目が醒めると列車は山口県を走っている．もう少し横になったままでいた いのだが，係の人が寝台をしまってしまう．それで寝ぼけ眼で外を見ていると，列車は関門 トンネルを抜けて九州に入る．八幡製鉄所や若門大橋が見えてきて，九州へ来たんだなあと 実感出来る．今まで４度程この風景を見ている．２度は子供のころ母に連れられて長崎に 行った時，後の２度は九州走破のサイクリングの時だ． 同じ４人かけの椅子に座っている人は，皆熊本に帰る人ばかりで，「ああ，九州だね」 と声が出る．「まだ暗いねえ」と感慨深げだ．日本列島は東西に長いために，九州の人が 東京へ行くと日の出の時間が早いのにびっくりするんだそうだ．そんな事もあるのかと， 名古屋を出たことの無い私は感心してしまう．列車は福岡を過ぎ，鳥栖で長崎行きの車両 を切り放して熊本を目指す．この辺り，懐かしい道が多い．九州を走破したのも３年近く 前の事になった．熊本に到着．私は自転車を組み立てて町へ走り出した．さすがに暖かい． |
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