うらんちゃん土佐犬を買う

　８月１日。高知の駅前から桂浜までは、約１５ｋｍ。町中は市電が
走り、路面も良くなく、交通量も多いので走りにくい。こんなとき、
私が背中に背負ったキャメルバックは、水分補給に効果を発揮する。
やがてトンネルを抜け高知港を抜け、土用波が打ち寄せる海岸に出た。
迫力だ。

　（番）のんこさん、海だよお。
　（の）わあ、すごい波。どこまでも海岸が続いているね
　（番）南の遥か沖に、台風があるんだろね、すごい波だね。
　（の）砂浜の砂が黒いのね、こっちではこうなのかしら
　（番）ああ、もう９時だ、うらんちゃんが待ってる、急ごう。

　桂浜の手前で、坂を上って、高知港をまたぐ浦戸大橋を渡る。
自転車３０円を料金箱に入れる。あっと言う間に海は眼下になり、
船や港の工場がパノラマで見える。橋の向こうに見える林が、うらん
ちゃんがキャンプしている種崎公園だ。うらんちゃんはどこだ！
いたいた！あれだ。

　うらんちゃんは、もう出発出来る準備をして待っていた。
右足の包帯が痛々しい。

　（う）わあ、番頭さん、のんこさん
　　　　こんなところで会えるなんてうそみたい。

いつもの調子で、鉄砲の連射のように、うらんちゃんはしゃべり
始める。このさびしがりやさん、よく一人で旅してるもんだ。
しかし思ったより元気なので、安心した。荷物のいくつかを私の
自転車に積み替えて、桂浜に行くことにした。うらんちゃんは、
もう大丈夫と、包帯を取ってしまった。ほんとに大丈夫なのかい？
　でも心配はなかった。私たちよりもずっと前に、浦戸大橋を
登っていってしまうのである。おいおい、無理しちゃだめだってば。

　土佐湾を見下ろして、坂本龍馬の銅像が立っている。男らしくて
かっこいい。桂浜、来て良かった。大波が目の前で砕けている。
「アイスクリン」売りのおじさんがいた。この、シャーベットと
アイスクリームのあいのこの様なお菓子は、高知の夏の名物だ。
さっそく２００円払って食べてみる。ううん、うまいなあ。
おじさんに銅像の前でシャッターを押してもらう。両手に花だね。

　うらんちゃんは、おみやげ物やで、土佐犬のぬいぐるみを離さな
かった。小さいのを２つ買い、「かつら」「りょうま」と名前を
つけていた。すっかり元気を取り戻したような感じだ。
昨日の電話のさみしそうな声を聞いたときは、心配したよお。
まあ、とにかくめでたし、である。
　のんこさんは、海を見つめている。大きな、大きな海だ。

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